第25回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した、山下和美の作品。
2014年〜2020年まで青年漫画誌で連載。全11巻。
ネタバレあり。
あらすじとある村では人は漏れなく50歳で知命(ちめい)という天寿を全うする。
夜は出歩いてはならず、大きな神の像が四方を囲んでいて、掟を破ると罰を受けるという。
さらにその村では双子は忌子(いみこ)とされ、どちらか一人を生贄に出さなければならなかった。
双子で生まれた少女、杏は双子で、父が幼い頃にもう一人のアンを捨てた。
その罪悪感から、父は目を潰した。
杏は父、捨吉と、捨吉の妹である叔母の真理と暮らしていた。
ある日村で暴動が起き、捨吉は亡くなり、真理は精神疾患を煩い、子供返りしてしまった。
掟により、父に捕えられそうになった杏は絶望していた。
鷲の足に捕まって空を飛んで見た景色の中に、高層ビル群を見た杏。そして、和音という青年と出会い、タブレットで文字を学んだ。文字を読めるようになったら、父からの手紙を渡すと言われ。
一方、もう一人のアンはその高層ビル群があるあの世と呼ばれる世界で高等教育を受け、生きていた。実は村はあの世が管理するこの世と呼ばれる箱庭だった。あの世では不老不死が開発されており、多くの人々は若い姿のまま生活していた。少子化対策のために施されたもので、ランド株式会社という会社が、実質的な政府の役割を担っていた。
一度大震災で大津波により殆どが沈没した日本が復興した世界だった。
この会社は二人の双子の男性が牛耳っており、一人は天音、もう一人は和音と言った。天音は年老いており、持病により不老不死の処置が効かない体だった。和音は若い姿のままだった。この世で知命を迎える人々は栄誉あるものとして葬儀が行われていたが、実際はこの世に連れていかれ、女性は花畑で働き、男性は過酷な現場で肉体労働をさせられていた。その現場は放射能に汚染された廃棄物を解体する作業だった。
部屋には複数で寝泊まりし、ドアのないトイレがあるのみで、昼は毎日カップラーメンだった。そして排便をチェックされており、病気に罹ったと分かるとどこかに連れて行かれていた。杏の幼馴染である平太の父も知命を迎えてそこで労働しており、そこで出会った男性と共に、飛行機に乗ってこの世へ帰ることを計画する。
アンの学校の友人である山之内の父がそこに訪れ、平太の父たちと出会い、飛行機を修理してこの世に飛び立った。一方アンは自分を捨てた父を恨み、あの世を抜け出してこの世へ行き、父と再会。捨吉は生きていた。捨吉もまた、不老不死の処置を受けた人間だった。
しかしアンは捨吉の命を奪うことはできず、破傷風に罹ってしまった。薬を貰いにあの世へ向かった捨吉。そこで山之内と出会い、山之内と共にこの世へ戻った。あの世ではウイルスにより不老不死の効力がなくなり、街は病院へ向かう老人で溢れていた。
薬によりアンは助かった。
真実を伝えることを決意した杏は立ち上がり、村の人々に文字を教える。止めようとした和音だったが止めることはできず。
杏とアンが再会し、協力して世界を統治することになった。杏はこの世を、アンはあの世を管理し、ランド株式会社の会長となった。パンデミック時、ランドの中でウイルスは抑えられ、他の国でランドの株主である権力者がほくそ笑んでいた。
杏は和音からようやく父からの手紙を受け取ったが、そこには落書きが書いてあり、嘘だったことがわかった。
天音は寿命で亡くなり、和音は世界を見に旅立った。
あの世にもこの世にも平和が訪れた。
感想
ここまで壮大ですごい話だとは思わなかった。日本には度々震災が来ており、日本沈没という映画もあるし、全くないとは言い切れないと思った。不老不死の技術は現実的ではないけれど。不老不死により人々は目的もなく漫然と生きているという描写だったけれど、確かにずっと若いままで生きられるなら、急いで何かをしなければならないという気持ちにはならないかもしれない。寿命が決まっているから結婚や出産を急いだりするわけで。
現代日本も長寿社会であるから少し似た部分はあるかもしれない。この世を統治していた鹿の被り物をした鹿男が出てくるのだけれど、あの男の正体は、この世が作られた際のリーダーだった。不老不死に反対した一部の人々が作った世界で、あの世を羨ましがる人が出ないように情報規制したのだった。
杏はなんだか苦手なキャラクターだった。意志が強すぎて怖くもあった。
アンは最初野生児だったけど、最終回では美人で聡明な女性になっていて良かった。
この世の統治の上での生贄や残酷な出来事が酷く、もう少しまともに統治出来なかったのかと思ったが。
自然のまま老いることを選択した山之内親子がいいキャラクターだった。アンもそれを選択したけれど、あんなに美人で頭もいいのに勿体無い。普通に育った女性と違って、アンは美や若さに対して執着はないのだろうけど。
命や災害、生きることの意味について考えさせられる漫画だった。
追記
荒川弘の黄泉のツガイが似ていると言われていてそれがきっかけで読んでみたけどこっちの方が面白い。











