忘却の都

忘却の都

すぐ忘れるから書く(^ω^)

劇場版コナン ベイカー街の亡霊 感想あらすじ結末

2002年上映。初見。
読み方はべいかーすとりーとのぼうれい。

映画版コナンの人気ランキングで堂々の一位を獲得している。友人も面白いと絶賛していたのをようやく見た。

衝撃的な内容だった。ネタバレあり。



あらすじ
人工知能が制御する体幹シミュレーションゲームに参加したコナン一行。

10才の天才少年が開発。
両親は離婚し、母親にアメリカに連れて来られたものの、母は他界。

コンピュータ会社の金持ちに育てられるも、缶詰の生活に耐えられず、高所から飛び降りて他界。



少年は最新のゲームに自身の精神を残した。

ゲームのお披露目会で、医者や政治家の子供など、各界の大御所の子供たちが選ばれて参加することになった。

卵の形をしたカプセルに乗り、頭に機械をつけられ、全身の感覚を制御される。

少年は世襲制を批判し、日本をリセットするため、生き残りを賭けたゲームをしろと子供達に言った。



50人参加の中で、一人でもゲームをクリアすれば生き残れるが、全員脱落すれば現実でも命を失う。

カプセルに近づくと電撃が流れるため、保護者たちは見守ることしかできない。

コナンと少年探偵団のほか、コナンのことが気になり、園子から参加バッジを譲り受けた蘭も参加していた。

彼らはシャーロックホームズがいた時代のロンドンいう設定のゲームの中へ入り込んだ。

現実世界ではコナンの父、工藤優作がコナンを見守りながら、現実での殺がい事件の犯人を追求していた。



犯人はコンピュータ会社の社長で、自害に追い込んだ少年の父を刺した。

少年が社長がイギリスの連続殺じん鬼、ジャック・ザ・リッパーの末裔であることを知り、それをバラされるのを恐れた社長は自害に追い込んだ。

そして、真相を究明しようとした父を殺がい。



コナンたちは次々と脱落し、最後に参加者の少年一人、コナン一人、蘭一人となった。

ゲームの中のジャックザリッパーと対峙し、蘭の機転によって倒すことができたが、列車が駅に突っ込もうとしていた。

そこに出張でいなくなっていたシャーロックホームズの姿が現れ、コナンに助言。

コナンと少年は無事ゲームをクリアした。



少年は、参加者の少年の体を借りた天才少年だった。
コナンはそれに途中で気がついていた。

少年は日本をリセットすると言っていたが、本当は世襲制の子供達に親の力を借りずに自分の力で頑張ることを学ばせたかったのだと言った。

そして、同年代の子たちと遊べて楽しかったと涙を流した。

コナンは現実世界へと帰り、子供達も蘭も全員、解放された。



感想
すごかった。面白かった。内容が重い。おそらく、2000年のバトル・ロワイアルに影響を受けたと思われる。

冒頭で灰原哀世襲制を痛烈に批判する。アニメでここまでストレートに批判するのはすごい。

親が権力があるからといって、偉そうにわがままに振る舞う子供たちを見て、あれらが日本を背負うとなると日本は終わりだと。



あれから20年以上経ったが、変わったように思えない。岸田総理の息子はいい例。

日本は過ちを繰り返すのねと灰原哀が言っていたが、まさにその通り。いつになったら変わるのか。

ここまで批判していながら、親の力を借りずに自分たちで努力してほしいという子供達への温かいメッセージが最後に盛り込まれている名作。



命懸けのゲームに強制参加させられ、好きでパパの子供に生まれたわけじゃないのに!と泣く少女にも考えさせられる。

望まなくても、例えば医者になれ、会社を継げと強制される家は、今でもあるのだろう。

ただ、伝統芸能、伝統工芸は継いで欲しい気持ちもあるし、世襲制が完全に悪いとも言い切れない。

悪いのは、思い上がり、貧困に苦しむ人々の気持ちを理解しようとしないこと。今の日本でよくいる、自己責任論を唱えるものがその象徴だ。



医者や政治家といった分かりやすい家だけでなく、そこそこ裕福で恵まれて育った人は、塾に通えず勉強ができない、そしてお金の使い方が下手な人の気持ちがわからない。

例えば、奨学金は借金なんだから、三流大学に行くなら無駄、借りたのはバカだなどと簡単に吐き捨てる。

自分が何不自由なく育ち、塾に通わせてもらい、学費を出してもらい、生き抜ける思考力を身につけられた幸福を知ることができていない。



今こそこの日本リセットゲームが必要なのではないかと考えてしまう。

理解ができなくてもいい。ただ寄り添う気持ちを忘れてはならない。本作に登場する生意気な子供たちがそのまま大人になったような冷酷な日本人が多い。

歌舞伎の子供だろうか。オネェキャラの子供が好きだった。最初は嫌なやつだったが、コナンを庇ったり、いい子になっていた。



金持ちの親ほど、子供に対して優しさと慈悲を教えてほしい。親が人を見下す考えでは、碌な子供に育たない。

世の中は金持ちだけで回っているのではない。むしろ大勢の貧困者が支えている。それをゆめゆめ忘れないように。

そして同時に、いま貧困に喘いでいる人、学がない人は心無い言葉に負けずに、腐らず、奮起してほしいとも思う。

園子や博士の声がいつもよりクールでかっこよかった。特に園子の声が低めでよかった。最近は甲高いけど、これくらいの落ち着いたヴォイスに戻してほしい。



作画がかなりいい。冒頭の工藤優作と工藤有希子の紹介の絵がよかった。
ジャックザリッパーのキャラデザは80年代〜90年代のような古さがあってよかった。

ゲーム内ではコナンの便利グッズが使えなかったり、なかなかハードモードな空間だった。

最後のワイン漬けは急性アルコール中毒にならないか心配になった。

子供の自害があることや重い内容から、地上波はなかなか難しいのかもしれないが、何度でも放送してほしい名作だった。